入れ歯のにおい 

「恍惚の人」の中に熟年の夫婦(信利と昭子)が、痴呆の父(茂造)に鎮静剤を飲ませる下りがあります。高齢者介護と入れ歯の関係をストレートに表現しています。以下 関係部分を引用させて頂きます。
 マスクをしてから お読み下さい。
 

恍惚の人 有吉佐和子著(新潮社昭和47年初版)より引用
その日は信利も早めに帰宅して、茂造の就眠前に服用させてみたが、
茂造は温和しく口を開けて薬を飲み下した。
信利は昭子の手伝いをしたのだが、茂造が口を開けたとたんに
毒ガスに当たったような臭気を感じた。
それを言うと昭子もかねがね感じていたところだと言い、
「入歯だと思うのよ。一度も洗ってる様子がないんですもの。
気持ち悪いからほっといたけど、考えてみれば不潔ねえ」
信利の目の前でそれをやることに一種の快感でもあるのかと思うほど、
昭子は気負いたって茂造の口に手を入れ、やにわに上下の入歯を外した。
 うわあっと昭子も信利も叫んでいた。
臭気が、まるで東京都の夢の島もこうかと思えるような、排泄物寄りも
もっと強烈で、腐臭と呼ぶべきものが、わっと部屋に溢れた。
昭子は嘔吐感を抑えながら台所の流しに入歯を投げ出して蛇口を捻り、
たわしを使って水で汚物を流した。
入歯そのものが箱に詰まってるところを見てさえ気持ちが悪かったのに、
それに何ケ月分もの食べ滓がへばりついているのだ。
茂造は鼻から下が前の寸法の半分に縮まって、巾着のようにしぼんだ唇を
、まことに不本意に思っているらしく、さかんに両手を動かして何事か
弁じ立てているが、歯がないので言葉にならない。
「お爺ちゃん、ブクブクをしなさい。さあ、ブクブクしなさい」
昭子は自分の髪が逆立って入るのを感じた。
信利は何に驚いたのか、おろおろ、おろおろして用の足しにもならない。
昭子は茂造を掴まえて、冷たい茶を飲ませ、口の中を濯がせるために、
何度も何度も、ブクブク、ブクブク、ブクブクと言って説明した。
テレビで広告している口中清涼殺菌剤というのを買ってこなければ
いけないとも思った。
ようやく口を濯ぎ終わったところで、入歯をはめこむのも大変な作業だった。
茂造が温和しくしていないから、随分骨が折れた。
ようやく上も下もはめこんだら、茂造の声が言葉になって、
「ひどい人ですね、昭子さん。私の歯をとったりして、ひどい人ですね」
「でもお爺ちゃん、入歯は洗わないと不潔ですよ。
臭くって私たちたまらないんですもの。
嫌だったら、これから自分で入歯を洗って下さい。」
「私は入歯じゃありません。これは自分の歯です」
「自分の歯だったら取り外し出来るわけがないでしょう」
「そうですよ、取り外せませんとも」
{新潮社 恍惚の人 有吉佐和子著}
(昭和47年初版)より引用
「私は入れ歯じゃありません。これは自分の歯です」
「自分の歯だったら取り外し出来るわけがないでしょう」
「そうですよ、取り外せませんとも」
茂造氏はこんな感じでしょうか?(想像図)(^-^)v

 著者の有吉さんは行政の動きより先に、環境問題、高齢者問題を小説という形で世に問うたことで 知られています。
「複合汚染」「恍惚の人」など一足早く 今日のひずみ社会を話題としています。
上の文章は恍惚の人の 一部で 入れ歯について書かれており ボケ状態の 高齢者の 入れ歯の清掃がされていない場合の 描写が強烈です。
HPの作者も 福祉施設へ「入れ歯の名前入れ」ボランティアに参加させて頂く ことがあります。
介護者の方々の努力で とても綺麗な清掃状態です。 ただ その入れ歯の別の 意味での「ひどい状態」に驚きます。かみ合わせにはじまり 人工歯の脱落 補強線の露出 クラスプの破断 ・・・・  殆どが 低位咬合状態です。
入れ歯のせいで 健康を損なうことは 多いに有ります。
因果関係が証明されないから と 低位誘導の義歯を作り続けていいのでしょうか?
「複合汚染」の引き金であることを・・・・・
(低位誘導とは 当たるからと削って人工歯を当たらなくします。
義歯を作り替える度に 噛み合わせの高さが低くなっていく
状態で 最後はかみ合わせると 唇がたたみ込まれたように
「クシャオジサン」みたいになったモノを言います)
  
 
口臭の新聞記事抜粋  ’98/11/8 掲載
歯磨きや歯石除去…専門医が訪問
寝たきりの高齢者の介護において、歯磨きや歯石除去などの口腔ケアの重要性が注目されている。高齢者に多い呼吸器の感染症の防止効果や、寝たきりの原因になった病気の症状回復にも役立つという。
(大阪府守口市の歯科医の訪問ケアに同行。)
3年前妻が脳内出血で倒れ、1年半の入院後自宅療養に切り替えたが、全身マヒは残っているという、守口市内の夫婦宅へ訪問。
介護ベッドの背もたれ部分を立てて、歯ブラシですみずみまで歯磨き。口に水を流し込んですすぐ。もちろん歯石もチェック。要する時間は約30分だ。
この女性は昨年5月からかかりつけの医師の紹介で、この歯科医の訪問ケアを受け始めた。
それまではガーゼで口を拭く程度の彼女の口の中はぼろぼろで、初めの内は歯ブラシを使うたびに歯茎から血が出て、口の中が真っ赤になったという。現在は月1回の訪問ケアを受け、正常な状態に戻り、日常の歯磨きは家族でも出来るようになった。
入院中は食道の途中に開けた穴からチューブを通し、液体食を注入して食事を取っていたが、口内が正常に戻った今は、おかゆなども口にすることができ、表情も明るく、笑顔を見せたり舌を前へ出したりすることもできるようになった。口臭もなくなったという。
「寝たきりの人が臭いによって周りから避けられてしまうことがある。その多くは口臭であり、これらは口腔ケアで得改善できる。その結果として家族とのコミュニケーションが復活するなど、臨床的にも重要である。」とこの歯科医は話している。
介護保険で口腔ケアをどのように扱うかは、老人保健福祉審議会で現在検討中。今年9月の中間報告によると、介護保険の「居宅療養管理指導」に該当するが、厚生省は「実際に歯科衛生士が歯磨きなどをする場合、介護保険・医療保険のどちらの対象とするかは、これからの議論になる」としており、来年3月頃の最終報告待ちとなっている。また、ホームヘルパーや介護施設における口腔ケアに対する認識の遅れを心配する声もある。
《毎日新聞 98年10月31日付》
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