恍惚の人昭和47年6月初版 有吉佐和子さん著より(新潮社)
以下 入れ歯の歯の数について 描写された部分です。
かって自分の父親が素人の手細工で総入歯を作り出したときの記憶が戻ってくる。
そんなものの作り方など書いた本でもあったのだろうか。 来る日も、来る日も、 乳白色の歯を何本も作り、紅色の歯ぐきを作って組合わせ、それが大きすぎた、 小さすぎたと言って、削ったり、粘土細工のようにはり足したりしていたのを、 眉をしかめ、冷淡に横目で睨んでいた自分を思い出す。 遂に癇をを立てた茂造が、歯が三十二本なければならないことはないと言い出し、 上も下も、一枚歯にしてしまったことがあったが、あのときは凄かった。 出来上がると、誰彼かまわず見せるのがあの頃の茂造の困った癖だったが、 歯に隙間がないどころか、ぬらっと白い曲面だけ見せたのっぺらぼうが、 唇を割って現れるのは、まったく薄気味の悪いものだった。 しかし、信利も今になって、歯の具合の悪さに癇を立てる年寄りの気持ちは 察しがつく。 新潮社 「恍惚の人」 有吉佐和子著昭和47年6月初版 |
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